接着ブリッジ

抜かない歯医者には
「歯を抜かない」と「歯の神経を抜かない」の2つの意味が含まれています。
今回の症例は歯は抜くことになりましたが歯の神経は抜かずに残す接着ブリッジの症例です。
この症例はむし歯を必要な部分しか削らないので、患者さんの考える「削らない治療」とはこのような事を示していると思います。

図1 術前です

患者さんは左上4番(第1小臼歯)の抜歯が必要とのことで、セカンドオピニオンで来院しました

図2 術前レントゲン写真

一番左の歯が問題の左上4番です。再治療が複数回されていて外科的に歯根端切除も行われていましたが予後不良となっています。

患者さんに提案できたのは

  • 1: 左上4番抜歯 左上345ブリッジ
  • 2: 左上4番抜歯 左上4インプラント
  • 3: 左上4意図的再植

以上3種類の治療方針があることを伝えたところ、患者さんは1:「左上4番抜歯 左上345ブリッジ」を選択しました。

患者さんの左上4番は抜歯となりました。3番と5番は神経も残っているのでブリッジの長期的予後も良いことからインプラントではなくブリッジを選択することにしました。

図3 左上4番抜歯後

抜歯後の傷も順調に治ってきています。

図4 左上5番 虫歯治療

左上5番のインレーを外して、中にあるむし歯の治療をしていきます。

図5 左上5番 虫歯治療完了

左上5番の虫歯治療が終了しています、それと共に左上3番の古いプラスチックも詰め直しています。

図6 左上345番 接着ブリッジ形成完了時

左上5番はむし歯が大きめだった為にクラウンの形成となり、左上3番は歯がほとんど無傷だったので、接着ブリッジの形成が可能となりました。

図7 左上345番接着ブリッジ形成完了時(拡大)

抜歯後の傷も治り最終処置に進めます。左上3番はエナメル質しか削っていません。最も深いピンの部分でも1㎜程度の形成量です。

図8 左上345番 接着ブリッジ 術後

重症だった左上4番は抜歯を選択しましたが、左上5番の神経は抜かずに被せることが出来ました。さらに左上3番は接着ブリッジの選択できたことにより歯はほとんど削らずに治療が出来ています。

図9 左上345番 接着ブリッジ 術後(拡大)

接着ブリッジのセットにはスーパーボンドC&Bを使用しています。

図10 術後

かなり目立たないように作製できたと思います。左上5番を白いクラウンにする事も可能でしたが、咬合力、ブリッジ自体の強度や耐久性、歯を削る量などを総合的に判断して今回の症例では金属を選択しています。

最後に術前と術後の比較をしてみましょう

図1 術前

図2 術後

図11 術前 咬合面観

図8 術後 咬合面観

図4 虫歯処置前

図7 虫歯処置後

いかがでしょうか?

今回の症例では「抜かない歯医者」の治療で「歯の神経を抜かない」事と「歯をけずらない」ことが分かりやすいのではと思っています。
皆さまの参考になれば幸いです。