2009年に新しく「岩田有弘歯科医院」 を立ち上げるにあたり、保険診療を主体とした治療を行うかどうかを検討しました。医院の運営のことを考えると、一般的な歯科医院がすべてを保険診療で行うには1日に20人前後の患者さんを診なければなりません。1人あたりに概算すると、かけられる時間は25分程度です。
しかし、歯科治療の多くは、それほど短時間で行えるものではありません。歯の治療は本来、とても時間のかかるものなのです。
例えば虫歯の場合、削る部分を最小限にするにはとても時間がかかります。時間をかけずに作業をすると、虫歯になっていない部分も含めて神経が露出するまで歯を削ってしまう事が多く、そうなれば露出した神経は抜かざるを得ません。そして、神経が無くなると、20~30年後にはひび割れて抜歯するような事態になってしまうのです。
一方、時間さえかけられれば作業はシンプルで、歯の内側と外側を丁寧に掃除して詰め物をすれば、何も問題はありません。30代以降の歯のトラブルの多くは再治療が原因なのですが、このことからも、初診で時間をかけて適切な処置を行うことが重要だと言えます。
歯科医師が治療、再治療を繰り返す悪循環のサイクルになると、どんどん歯が悪くなってしまうだけでなく、患者さんの経済的負担が多くなってしまいます。
また、都市部では今、歯科医院に過当競争がおきています。過剰と言われるほど歯科医院がたくさんある中で、自分がやりたいこと、自分にしかできないことは何なのか。
それは、多くの歯医者が「残すことができない」「難しい」「面倒くさい」と考えて抜いてしまっている歯を残し、患者さんの口腔の健康を守ることなのではないか。
しかし、そうした歯を残す医療と経済性の両立は今の日本ではやはり難しいと判断しました。そこで、保険診療で1人25分の治療を行うことより、歯を残すためにやるべきことを行うスタイルを重視することにしました。
もちろん、治療費は安いほうがいいと思いますが、必要な機材や時間、人財を用いるには保険診療だけではとても「自分がされたくない治療は行わない」ことは出来ないと考えました。
これらの考えのもと当院では保険診療を一切行わず、自由診療の歯科医院となりました。